等身大の女刑事ががんばる!『ON 猟奇犯罪捜査班 藤堂比奈子』ー内藤了
久しぶりの投稿は、このシリーズ。
発売当時から追っていて、キャラ立ちしている登場人物と読みやすい文章にすっかりハマってしまった。
波留主演でドラマ化もされていましたが、あれは登場人物も全く別物。
もちろん面白いのですが、個人的にはやっぱり小説の方が好きなので、是非読んでみてほしい。
この「藤堂比奈子シリーズ」は2018年2月現在で7巻まで発売されていて、次巻クライマックス?らしい!やだ~。
物語は、八王子西署に配属された新人警察官、藤堂比奈子が次々と立ちはだかる猟奇事件を前にして、持ち前の前向きさと機転の速さで解決していくという痛快クライムサスペンス。
以下、もちろんネタバレしてますのでご注意。
あらすじ
程よい田舎であり平和そのものの八王子で、ある時「自分で自分をレイプし虐殺した」としか思えないような遺体が発見される。
被害者はかつて女の人をレイプし殺害した犯罪者で、その死にざまはかつて自分が行った犯行と同じような姿で、しかもそれを録画していた。
状況からして他殺として捜査は進められるが、遺体からは本人以外の指紋は出ず、現場にも手掛かりはない。検死の結果、遺体は自殺の可能性が高いと判断されるが、果たして自分の肛門を切り裂きビンを詰めてから自殺することなどあるのだろうか・・・?
新人警察官の藤堂比奈子は、お茶汲み内勤警官から卒業して初めて関わる事件として、この奇妙な殺人事件を担当する。
上司の「ガンさん」こと厚田巌夫刑事と共に聞き込みや現場検証など、驚異的な記憶力と持ち前の人当たりの良さで、真正面から事件に立ち向かっていく比奈子。
お守りの七味缶を手に奔走する中で、過去に「自分が犯した殺害方法で自殺」した受刑者の事件が起きていたことが発覚する。
頭を殴打して殺した受刑者は、頭を自分で打ち付けて死亡。
死ぬ前に「あいつがくる」と発狂し、泣きながら自分の頭を壁に打ち付けた。何度も、何度も。まるで見えない誰かに襲われているように。
事件につながりを感じるが、解決の糸口は掴めない。。。そんな状況の中で、比奈子は事件関係者のカウンセラーであった中島保医師とであう。
野比先生と呼ばれるそのカウンセラーは、過去に少年犯罪を犯した加害者の矯正と社会復帰を支援するメンタルクリニックに勤めており、何度か顔を合わせるうちに二人は心を通わせていく。
事件のさなか、通り魔に親友を殺された比奈子と、過去に重いトラウマを抱える野比先生。
野比先生から母親を殺して少年院送りになった少年の話を聞き、脳を人為的に操作することで幻覚を起こさせ自死させる可能性にたどりついた比奈子は独自で調査を始めるが、その先にあったのは思いもよらぬ悲劇だった。
みどころ
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新しいタイプのヒロイン
女刑事というと、男顔負けのバリキャリでパンツスーツで走り回る、竹内結子(ストロベリーナイト)とか真木よう子(SP)とかが出てくると思いますが、この主人公・藤堂比奈子ちゃんは、本当にフツーの女の子。
そもそも警察を目指したのだって、過去に家族を殺されてとかそういうのではなく、刑事ドラマ好きの母親に「警察官なんて格好いいんじゃない?」と勧められからというゆるふわっぷり。
特に運動が出来るわけではなく、熱いわけでも冷めてるわけでもない彼女ですが、一度見たことを忘れない、という驚異的な能力を持っています。
漢字が苦手でイラストをメモすることで、人の言ったことを一言一句違わず思い出すことができ、これが結構事件の糸口になったり、重宝されるわけなんです。
また、色んな人から刑事らしくないと言われる人当たりの良さで、特に女性相手の聞き込みやセンシティブな話題のときは居てくれると非常に和みます。
人の話を引き出し、現場に残されたわずかな違和感を拾う。そしてそれらを組み合わせることで事件の全貌を明らかにしていくのが比奈子たち厚田班の仕事です。
そして比奈子の最大の魅力は「どんな過酷な事件にあっても決して挫けず犯人を追いかける熱意」だと思います。
物語の中で、比奈子はこれでもかというほど様々な猟奇事件に出くわし、とうとう「猟奇犯罪者ホイホイ」という忌み名までもらってしまうのですが、どれだけ憔悴しようとも怒りを抱えようとも、横に逸れることはありません。必ず復活して、いつもの前向きで明るい、警察としての使命感に燃える彼女に立ち戻るのです。
被害者の死に際し、その無念な気持ちや遺族のやるせない気持ちを受け止めて泣きます。変に事件慣れして遺体を遺体としか見ないのではなく、その生前の人生に思いをはせて、絶対に犯人を捕まえてやると燃えるのです。
犯罪者に対しても、「人殺し」として切り捨てるのではなく、その生い立ちや考えも知った上で人間として接します。
優しくて素直な彼女だから、たくさんの人に愛されているのもよく分かる。
そんな主人公なのです。
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個性豊かな登場人物たち
ライトノベル並みにキャラ立ちした登場人物があれこれ話を動かしてくれるのも魅力の一つです。
まず、主人公の所属する通称:猟奇犯罪捜査班のメンバーですが、班長のガンさんは昔気質のたたき上げ警察官。見た目はごついしいかにも「警察官」な姿ですが、比奈子の突拍子のない話も怒らず耳を傾けてくれる理解ある班長です。後述の死神女史の元夫で、今でも尻に敷かれている感じ。
比奈子の先輩・東海林はお調子者の体育会系。こっそり自分の資料を比奈子のデスクに移したり、さんざん比奈子をいじり倒してくるウェイ系刑事ですが、警察官としての使命感は強く、作中では捜査一課へ栄転してなお比奈子たちをサポートしてくれる良い先輩です。彼と比奈子の掛け合いはとても面白い!
同じく比奈子の先輩の倉島はスタイル抜群のイケメンだけど、恋人は愛車の忍という筋金入りのバイクオタク。捜査にももちろん忍を乗り回してます。
清水は初期はいたかいないかくらいの存在でしたが、最近では「存在の薄さ」を売りに捜査するという設定が盛られ、片岡については足で稼ぐタイプの昔ながらの刑事さん。
どちらも初期はあまり目立たないキャラでしたが、話が進むにつれ個性が際立ってきました。
そして検視官の三木捜査官は、これまたいかにもという感じのオタクで、喋り方も「~ですかな。」とか言っちゃうタイプなんですけど、彼もいい味出すんですよね。検視官としてももちろんですが、オタク的スキルで情報を集め、事件解決に導いてくれることも多々あり。彼女の西園寺麗華(!)さんも、これでもかというくらいコッテコテで愛すべきキャラクター。
最後に法医学者の石上博士ー通称:死神女史が、被害者の遺体から様々なメッセージを汲み取り、事件に協力してくれます。ハスッパでタバコとチョコレートをこよなく愛し、解剖後に焼き肉に行くなど常識はずれでぶっ飛んだ人ですが、比奈子とは気が合うらしく、彼女の成長を見守ってくれてもいる。
彼女を主人公にしたスピンオフもあるみたいですが、私は未読です。
猟奇犯罪捜査班のメンバーは全員、被害者への哀悼と、それ以上に犯人への怒りを素直に感じ取り、事件をただの数字や仕事としてとらえる人はいません。
だからこそ読んでいる側も同じように犯人に怒り、共感することができるのだと思います。
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刑事と犯罪者の恋
ストーリーとしては毎回なにかしらの事件が起きるのですが、それと並行して主人公・藤堂比奈子と、犯罪を憎むあまり自分が犯罪者になってしまったカウンセラー・中島保(野比先生)との恋愛も描かれています。
野比先生は、人為的に脳に腫瘍を発生させることで犯罪者に自身が犯した殺人を追体験させ自死させるという実験を行っていました。そう、あらすじで書いた事件の真犯人なのです。
野比先生は大学生の頃、床に手足を打ち付けられ、生きたまま解剖された少女の遺体を発見したことがあり、それ以降、「幼少期に心に傷を負った犯罪者に幸せだったという偽りの記憶を植え付けることで犯罪から更生させる」という研究に没頭してきました。
腫瘍を発生させる、というのもその研究の一環ですが、いつまでたっても反省するどころかのうのうと生きながらえている殺人者を許すことができず、カウンセリングと偽って腫瘍を発生させる実験を行っていたのでした。
野比先生は自分の犯した罪の重さを自覚しており、比奈子はそんな愛する人を逮捕することになるのですが、野比先生の研究に興味を示した政府は秘密裏にとある研究センターへ隔離します。
野比先生はそこで研究を続けつつ、心理犯罪プロファイラーとして猟奇犯罪捜査班に協力することになるのです。
犯罪者を憎む心は同じでも、警察と犯罪者として永遠に交わることのない境界を引かれてしまった比奈子と野比先生。
それでもお互いを想う気持ちはとめられず・・・捜査の一環として監視されつつ話をすることが唯一の逢瀬となるのです。
たぶん、お互いがどうにかなることはこの先きっとないのでしょう。一生塀の中と外で隔たれながら、それでも会いに行くんじゃないかな。
最新刊では、野比先生の研究に目を付けた組織に狙われているという状況もあり、ますます二人の関係には目が離せません。
感想
角川ホラー大賞読者賞を受賞して発行された本作。
ホラーというよりはSF寄りの刑事ものですが、主人公のひたむきさとテンポの良さに引っ張られてすいすい読めてしまいます。
よくある刑事小説の組織内抗争とか武骨な刑事象とかにあまり魅力を感じない私なので、同じ年ごろの新人女性警官が主人公というとこがとても手に取りやすかった。
物語には無駄が無く、すいすい話が進んでいくので、謎解きとか犯人探しとかはできない(序盤で犯人分かるときとかある)けど、この先どうなるのー??と一気読み出来てしまいます。
プロローグは必ず遺体の発見から始まるんですけど、どの遺体も凄惨で文字で読むだけでも嫌な気分になる。腐敗して発生するガスとか、運悪くそれを見つけてしまった人たちの動揺と高揚とか。
猟奇犯罪者ホイホイの比奈子ちゃんはよく犯人と一対一で対峙するピンチに陥るんですが、その臨場感も手に汗握る!
作者は長野在住で、比奈子ちゃんも長野出身ということで、長野が舞台になることもあるし、八幡屋磯五郎の七味とか雲切目薬とかローカルネタもちらほら。
恐ろしい猟奇事件を描きながらも、随所に気の抜ける会話があったり、禁断の恋があったり、何より登場人物たちのおかげで話が重くなりすぎず、とても読みやすい!
空いた時間でもするする読めるので、ちょっとでも興味が湧いたらぜひ読んでみてください!
ラッキーすけべと暴力ヒロインの化学反応!『まとめ★グロッキーヘブン』ーみたおでん
※いつもよりお下品になっておりますのでお気をつけください。
かつて、ラッキーすけべとして世の女子たちを赤面させた男がいた。
幾多のお風呂場ドッキリ、スカートめくり、パイタッチを経て、彼は生涯の伴侶と結ばれた。
エッチな場面に遭遇するごとに、その拳で制裁を加えてきた彼女は、「暴力ヒロイン」。
かくしてラッキーすけべの父と、暴力ヒロインの母のもとに生まれた娘は、どんな運命をたどることになるか―――?
と、こんなかんじで父親の血筋を濃く受け継ぎ、「ラッキーすけべ」としての才能を開花させる女の子が主人公のハイテンション・ラブ?コメディ漫画です。
2017年11月現在で3巻まで発売中!
少女漫画だけど中身は「Toらぶる」とか少年漫画系のお色気ネタ満載になってますので、少コミ系のエッチシーンを想像すると拍子抜けするよ!
あらすじ※ネタバレあり
まとめちゃんのエッチ!
海原まとめは高校生の女の子。今日から女子高だった母校が男子校と合併し、共学になるため、新たな出会いに胸をときめかせます。
↑まとめは至って平凡で初心な、普通の女子高生でした。。。
楽しい高校生活を期待するまとめでしたが、そんな希望は脆くも崩れ去ります。
併合した男子校に通っていた彼女の母方の従兄・森島集(もりしまつどい)と出会ったことによって―—。
↑集くんは『鯉高のプリンス』と呼ばれるほどのイケメン。しかも硬派。
まとめは廊下で滑ってしまい、初対面の彼の股間にタッチ。
ここからまとめのラッキーすけべの才能が凄まじい勢いで開花していきます。
クラスメイトの男子に練乳をぶっかけたり、男子更衣室に突入してしまったり。その中でも一番まとめの被害にあってしまうのは、やっぱり集くんなのでした。
柔道部員として硬派でクールなキャラを通している集にとって、まとめにセクハラされ恥をかかされて、思わず手を出してしまいそうになります。
相手は女の子なのに。。。冷静さを取り戻そうとしますが、それも抑えきれない衝動に駆られてしまう。
それは、彼もまた母方の血を色濃く継ぐ、『暴力ヒロイン』の才能を身に宿しているからなのでした。
ラッキーすけべ・暴力ヒロインとは?
ラッキーすけべととはその名の通り、不可抗力により異性のフワア~オ♡な現場に遭遇してしまう力であり、暴力ヒロインはそんなラッキーすけべに対して鉄拳制裁を加えるひとのこと。
平穏な生活を望んでいた二人に突如湧き出た能力により、まとめはやたらと男子の制服を剥いでしまうし集も出会い頭に半裸になってしまったりする。
お互いに距離を取ろうにも、運命の力によりアパートが全焼して家を失った集がまとめの家に居候するはめになるなど、二人の受難の日々が待ち受けているのでした。
にわかに学校のお騒がせカップルとなるまとめと集くんですが、問題は深刻。
まとめの能力は無差別に発揮されて学校ではどこかしら男子の悲鳴が聞こえるし、集くんも壁ドンで校舎を壊すくらいの怪力を発揮してしまい、周囲を巻き込んでのドタバタ劇が巻き起こります。
<まとめのラッキーすけべ>
↑集くんとのファーストコンタクト。
↑男子のはだかならOKなのでは?
↑定番のお風呂場ドッキリ☆
これ以外にもけっこう際どいセクハラをしてしまっているまとめですが、本人はいたって真面目。不可抗力に足掻けば足掻くほどもっと状況がひどくなっていくという。。。
メッチ(=まとめちゃんのエッチの略)というありがたくないあだ名までつけられてしまいます。
個性豊かなヒロイン?たち
暴力ヒロイン・集くんとの出会いによりそのラッキーすけべを発動させてしまうまとめですが、多くの男の子たちがその餌食となってしまいます。
モブも含めるとほとんどの男子がメッチに服を破られたりクリームぶっかけられたりしていますが、集の友人・帆波カイと、まとめの幼馴染・鯨井ルカは二人と仲が良い分特に被害を受けています。
◆帆波カイ
自分から積極的に脱いだりまとめをからかったりするフェロモンムンムン系イケメン。
まとめと集いの属性を知り、面白がっていろいろ関わってくるお兄さんポジ。
まとめにヨーグルト吹きかけられますが、そんなまとめにエロとはなんたるかをレクチャーしてくれたりします。
お父さん曰く、ラッキーすけべの周囲に必ず一人は存在する、すけべに寛容な「オープンエロ系ヒロイン」。たいてい巨乳らしい。
◆鯨井ルカ
まとめが子供の頃仲が良かった男の子で、高校に入って再会した幼馴染。
すけべされても怒らない、動物が大好きな天然ヒロイン系男子。鳥使い。
わんこに股間を舐めまわされたり、観覧車でまとめの膝にのってガクガクされちゃったり、集くんに負けないくらいひどいセクハラを受けています。
そして幼馴染という、ときメモでいえばメインヒロインにあたる立ち位置であるため、周囲からもまとめの新恋人?!と噂されます。
集くんルートはどうなる?
初めこそ互いに距離を取っていたまとめと集くんですが、交流を重ねるにつれ少しずつ仲も良くなっていきます。
まとめは集くんの迷惑になりたくないから自分なりに努力しようとするし(全部裏目に出ちゃうけど。。。)、従兄と仲良くしたくて健気にふるまいます。
集くんも元々優しくてしっかりした性格だから、そんなまとめを見ると申し訳ないなと思うし、彼女の明るい性格に励まされたりしています。
そしてラッキーすけべという不可抗力の力により否応もなくゼロ距離接触も避けられないので、お互いドキドキするのは日常茶飯事。
また、ラッキーすけべの暴走を防ぐための手段として、『ラッキーすけべと暴力ヒロインが結ばれる』という可能性を示され、ますます二人の距離は近づきます。
まとめの父と母も、付き合うようになってからラッキーすけべが息をひそめたとのこと。
ただし、ラッキーすけべが誰か特定の人と結ばれれば良いのであって、その相手は集くんでなければならないという訳ではありません。
その事実に集くんがもやもやしたり。。。
集くんがまとめはルカが好きだと勘違いしたり、集くんが実家に戻ることになったり、まとめが山で遭難したり、運動会があったり、二人は色んなアクシデントに見舞われながら心を通わせていきます。
3巻現在ではルカが本格的に参戦してきそうな雰囲気もあり、まとめも未だに恋愛感情に疎い様子で、集くんも落ち着いていられません。
ラッキーすけべと暴力ヒロインの血を受け継ぐ二人はくっつくのか?
少女漫画らしい恋愛描写もあり、二人の行く末にドキドキします。
感想
まとめちゃんのラッキーすけべは結構すごい。内容が。
ロッカーの中に閉じ込められてアタフタとか、鞄が股の間に挟まって抜けなくなったりとか、男の子たちの赤面と汗と喘ぎ声がこんなに描かれた少女漫画ってあんまりないんじゃないでしょうか。
そう、カイくんが言うように「エロが男性向け」なんです。
そのおかげでハチャメチャに笑えますし、ギャグ要素も濃くてとにかく面白い。
ラッキーすけべと暴力ヒロインというお約束キャラが男女逆転したら?という発想で描かれている物語なので、ギャルゲーを乙女ゲーにした、みたいな感じか?
正統派ヒロイン集くんのほかに、お色気ヒロイン、天然ヒロインも勢ぞろい。
あとは妹ヒロインとか高飛車お嬢様とか病弱ヒロインとかかな?
まとめを中心に逆ハー展開が繰り広げられてますが、あくまでメインルートは集くんかな。
ラッキーすけべに押されてなし崩し的にまとめと距離を縮めている集くんが可愛いし、やっぱり二人はお似合いだと思うよ~。
<おまけ>
↓いたずらな強風にガクガクされるルカ。ノリノリである。
↓満員電車でガクガクされる集くん。完全に痴漢。
ランキングに参加しています。
よろしくお願いします。
山で食べるご飯は美味い。『山と食欲と私』ー信濃川日出雄
山でごはん、食べてみたいなあ。。。
最近読む漫画と言えばコミックエッセイかグルメ漫画。
頭を使わずにさらっと読めてしまうものばかり選んでしまう。
昔はグルメ漫画なんて読むくらいなら直接食べればいいじゃんと思っていたけど、おいしそ~なごはんの描写を見るだけで満たされるものなんですなあ。
ということで、ほかにもおすすめのグルメ漫画たくさんあるので、食シリーズ第一弾ということで。
『山と食欲と私』はその名の通り、登山しつつ山ごはんを楽しむだけの漫画なんですが、これが面白いんですよね~。食べるだけでなく、もちろん山の景色や自然の描写も素晴らしいし、孤独を愛する主人公の山と向き合う姿とか、ご飯おいしい~!だけの内容ではないので。
レシピも山ご飯だけあって手間がかからず簡単おいしいので、すぐ真似できるし。
2017年現在5巻まで発売されています!
あらすじ※ネタバレあり
レッツ山ごはん
主人公の日比野鮎美(ひびのあゆみ)は都内で暮らす27歳のOL 。システム会社の経理担当として働く傍ら、毎週のように一人で登山を嗜む、単独登山女子(自称)。
鮎美の楽しみは、山でごはんを食べること。それはおにぎりにはじまり、パスタ、雑炊、ラーメン、更にはお酒や肉まんも。食べたいと思ったものを食べるのだ。
美しい山の中でおいしいものを食べる。そのためだけに日々を過ごしているとさえ考えているようで、食事にかける情熱はすさまじい。
出来合いのものを持っていくこともあるが、基本は自分でごはんを作り、出来立てを食べる。
そのために調理用のミニバーナーを持ち込むのはもちろんのこと、鍋やホットサンドメーカー、熱燗を作るためにおちょこなんかもリュックサックに詰めて登る。
パスタはあらかじめ水に浸しておいてすぐ茹でれるように準備しておき、ポン酢を持っていくのに丁度よい分量だけしょうゆさしに詰め替え、ジャンバラヤを食べるためにトマトをくりぬいて中に具を詰めておく、、、あらゆるアイデアを取り入れ、手間も惜しまない。
荷物が重くなるからって、中身を減らすんじゃなくて体力をつけようとしたり。家で食べたら普通のごはんでも、山で食べるともっと美味しおすなあ。
けっこうな手間暇と情熱をかけて調理したごはんだから、めちゃくちゃ美味しそう!
突然ですが、ここで個人的に美味しそうなごはんランキングベスト3!!
◆第三位 ほかほか牡蠣フライの簡単玉子とじ丼
牡蠣フライは出来合いのものですが、玉子はふらつく山道を割らないように気を付けながら運んできたもの。もちろん生!寒い山頂で食べたら最高~
◆第二位 超豪華ローストビーフ丼
これはあらかじめ牛肉を下準備しておいて、お湯につけたまま保温しつつお肉に火を通し、改めて火を通しなおしたもの。あとはお肉を切ってごはんに盛り付けるだけ・・・って文字で書くと簡単だけど、普通に作ろうとしても面倒だよ!
◆第一位 思い出のホットサンド
個人的にホットサンドが大好きっていうのもあるんですけど、これは食パンの中にチーズ、じゃがいも、ベーコン、スライストマトが入ってて、ちょっと焦げちゃったんですけどこれがまた美味い!
ほかにも美味しいアイデア料理がたくさんでてきます。見るだけでよだれがでそう。。。
食べるだけじゃない、登山の魅力
もちろん鮎美は、食べるためだけに山に登っているわけじゃない。
もともとは数年前にあった登山ブームに引っ張られて友達と山に登り始めたいわゆる『山ガール』だった鮎美。
次第に登山の魅力に憑りつかれ、今では一人でもくもく山に登り、体を鍛え、道具を揃えるなどほぼライフワークに。
平日は淡々と仕事をし、金曜日になると炭水化物をたくさん摂ってエネルギーを溜め、土日は山へ。時には有休を使って泊まりがけで山へ向かうことも。
山小屋で雑魚寝や寒空の下でテント泊だってなんのその!
山に入れば電波も繋がらないしトイレだってすぐにいけない。
けれどそんな不便でしかない環境こそが非日常で、スリルで冒険心をくすぐられるし、何よりその景色が鮎美を捉えて離さないのだ。
都内在住なのでほとんどは関東近郊の山々をめぐるのだが、その景色の美しいこと。
虫が湧いても、雨に濡れても、寒さに震えても、壮大な自然を前にすると苦労などふっとんでしまう。その快感が魅力なのだ。
鮎美が登山のなかで出会った人々も、みんな山が好きで道を歩く。
鮎美のようにご飯を食べることだったり、仲間でパーティーをしたり、せっせと歩くだけだったり。でもみんな、笑顔で山を降りていく。
広大な生命力、時に厳しい天気。
鮎美は命の危機にさらされたり、恐ろしい目にあったりすることもあるが、それでも登山をやめない。
なぜ山に登るのか?という問いには、「そこに山があるからだ。」と答えるのは有名な話だけど、その理由がちょっとわかった気がする。
なぜ、ひとりで登るのか?
鮎美はいつも、ひとりで山に登る。はじめこそ山ガールと言われ友達とピクニック気分だったが、今やそう呼ばれるのはなんとなく嫌だ。
そもそも若い女性が一人で登山なんてことがあまりないから、周りの人には理解されないし、登山の集団からは浮いている。
それでも、ひとりで登ることにこだわる。
元々の性格が人見知りということもあるが、会社の人に「山へ連れてって」と声を掛けられても全力で拒否してしまうくらい、ひとり登山にこだわりがある。
友達がいないわけじゃないし、山に入れば見知らぬ人と友達になって一緒に歩くこともある。
それはそれで楽しいし、集団での楽しみもあるけど、やっぱり『単独登山女子』でいたいのだ。
鮎美は時々考える。
何故一人で山に登るのか?
都会で人にもまれていると、時々自分が分からなくなる。
すぐに誰でもつながることができ、食べたいものがすぐ手に入る日常と、電波の入らない山奥でトイレさえすぐに行けない非日常。
仕事や生活で慢然と日々を消費しているなかでひとりで山に入り、他者や日常との距離をとって心を解放することで、鮎美は心のバランスを取っているのだと考えている。
それは人間関係から逃げているのではないか?
鮎美はそう自問自答する。その通りかもしれない。
それでも、明日を生きていくためにあえて厳しい環境に身を置くことが、鮎美にとっての禊なのだ。
感想
この漫画の影響で、初めてひとり登山というものに挑戦しました。初夏の宝登山。
初心者でも登りやすくて楽しかった~!運動嫌いの私が、はじめて楽しいと思えるスポーツでした。
鮎美のようにご飯をつくることは出来なかったけど(装備なかったし)、山で食べたおにぎりはコンビニのやつでも美味しかったなあ。
帰りは温泉入ったりしてリフレッシュ。
そんで、ひとりって楽だと改めて思ったよね。自分のペースで自分の好きなときに休めるし。とにかく気を使わなくていいから、そういうところも鮎美の単独登山好きの理由なのかもと思ったり。
鮎美は普通に可愛いお嬢さんで、人見知りとは言っているけど作中では知らない人と交流したり、それが縁で仲良くなったり、思っているほど人見知りではないんじゃないかな。会社の他人とは結局仲良くなって、一緒に登山始めてるしね。
物語は単に毎回山に登ってごはん、ではなく、山で遭難したり体調崩して断念したり、忘れ物して取りにまた登ったり、山小屋で豪華ご飯を食べたり温泉入ったり、グルメ漫画だけでなく登山漫画としても楽しめます。
鮎美はガチめな登山女子なので、会社でもスクワットしたり階段上り下りしてトレーニングなどして鍛えています。
とにかく山が好き!登るのがすき!という気持ちが伝わってくる。
私もせっかく踏み入れた世界なんで、あったかくなったらどこか登りたいな。
次はごはんも作りたい。
装備は結構お金かかるから、節約の方向で。。。
あと、作中には鮎美だけでなく、形から入る系男子が主人公の回もあるんですけど、これも面白いですよ!
作り方分からなくて生野菜でチーズフォンデュしたり。。。俺らしいStyleで!
何も考えずに楽しみたいときにおすすめです。
興味が湧いたらぜひ。
<おまけ>
箸忘れて枝で雑炊を食べる鮎美。その執念凄いぜ。
ランキングに参加しています。
よろしくお願いします。
山で生きていく。森と生きていく。『神去なあなあ日常』ー三浦しをん
木を育て、森を整え、山と暮らす。
都会育ちの少年が、山奥の村で逞しく成長していく物語。
大自然の燃えるような生命力と、そこで息づく人たちの何もないけど明るい日常を描いています。
続編もあります。もちろん単品でも楽しめる。
映画化もされた名作なので、ご存知の方も多いかと思いますが。
度々手に取って読むくらい大好きな作品なので、ご紹介をば。
物語はとてもシンプル。
生粋の都会人である主人公が、田舎の山奥で林業を行う話を主軸に、慣れない田舎での生活や個性豊かな村の住人と交流、村に伝わる神話や謎の行事、そしてつれない女の子との恋。。。と神去村での一年を通して成長していく姿を描いています。
あらすじ※ネタバレあり
平野勇気、林業を知る
横浜生まれ横浜育ち、悪そな奴はだいたい友達な主人公・平野勇気は、高校卒業を前にしても進路を決められず、両親と教師から強引に三重県の山奥・神去村で林業に従事するよう迫られ、しぶしぶ中村林業(株)に就職することとなる。
元々希望していた訳でもない上、今までの人生にかすりもしなかった「林業」に興味も湧かず、更に下宿先の主で職場の上司でもある飯田ヨキにさんざんしごかれて、勇気は度々神去村を脱走しようとするが失敗。
嫌々ながらも、初めての林業の世界へ飛び込んでいく。
中村林業での仕事は、東京ドーム約256個分もに及ぶ広大な山々を管理すること。木を刈り、木を植え、木を売ることだ。
そのためには、雑木を刈って土に栄養が回るようにならし、木がまっすぐ伸びるように枝を切り、重みで枝が折れないように雪を落とす。
木々の生い茂る山歩きや、命綱一本で数十メートルの木にぶら下がる作業、容赦なく荒れ狂う山の天気。
肉体的にも精神的にも楽ではない仕事だ。
初めは木登りもチェーンソーの操作も出来なかった勇気だが、毎日山に入るにつれて次第に『山師』としての経験を積んでいくうちに、仕事が楽しくなってくるのだ。
自分が手を掛けて育てた木々はやっぱり可愛いし、立派に育って高く買い取ってもらうんだぞと親心のような気持ちが芽生えていく。
山の仕事は大変だ。
斜陽産業と呼ばれて久しく、時間と手間がかかる割にお金を生み出すような事業ではない。
林業では働こうという若者は姿を消し、都会に稼ぎに出て行ってしまうために高齢化が進み、人手が足りなくて山の管理が行き届かなくなってしまうのだ。
人の手を入れず、自然のなすがままに森を返すという手段もあるだろうが、人の手で植えられた木々は人の手で世話をしなければ綺麗に育たない。
綺麗に育った木が、山全体の環境を良くしてくれるのだ。荒れ放題の山は花粉の被害も大きい。
山師たちは、お金のためだけでなく、山で生きるために仕事をする。
そんな神去村の人々の生き方を勇気は共感し、林業について誇りとやりがいを感じていく。
平野勇気、ゆかいな村人と暮らす
勇気を取り巻く人々はとてもユニークで飾らない人たちだ。
神去村は山の谷あいにある小さな村で、住んでいるのはほとんどがおじいちゃんおばあちゃん。
勇気の住む神去地区には、未成年が勇気の他に勇気の雇い主で中村林業の社長である清一さんの息子で5歳の山太しかいない。
勇気の下宿先には飯田ヨキという、ほとんどチンピラにしか見えないような野生児がいるし、その妻のみきさんは浮気性のヨキにいつも怒っていて、おばあちゃんはそんな二人を尻目にしてのほほんとお茶を飲んでいる。
神去村の人々は概ね勇気に好意的で、あれやこれやと世話を焼いてくれるが、もちろんよそ者扱いで意地悪な人もいる。
村人みんなが顔見知りで、そのつながりは濃厚だ。
人と人との関係が希薄な都会育ちの勇気にとっては、全く新しい環境で築く新しい人間関係。
そんな中でも勇気が笑って生活していけられるのは、ひとえに神去村に息づく「なあなあ」の精神のおかげだ。
「なあなあ」を言葉にするのは難しいが、気張らずがんばれ、とかなんとかなる、とかそういう意味。
挨拶としても、相槌としてもよく使われる便利な言葉で、何か言われたら「なあなあ」と応えておけばなんとかなるという空気さえある。
村人たちはみんな、色々と難しいことを考えて他人に当たったり、先のことを考えて憂鬱になることはない。
自然と共に生きている人々にとっては、勇気が思う以上に死と生を身近にしているからだ。
山仕事で怪我や時には死んでしまうことだってあるし、悪天候が続けば作物だって実らない。冬は雪で覆われてしまうし、病院に行くにも一苦労な土地なのだ。
みんな今の生活のために生きていて、だからこそいつ死んでしまったとしても、それはどうしようもない、「なあなあ」の出来事として受け入れている。
むしろ「なあなあ」で済んでもいいように、毎日一生懸命生きているとも感じる。
生きても死んでも、それはそれでしょうがない。なるようにしかならない。
それは時に厳しい現実を突き付けることもあるけれど、つらい現実を受け入れて生きていこうとする、神去の人々のしなやかな精神は、都会で漠然と日々を過ごしてきた勇気にとってとても心地よいものだった。
ヨキはちゃらんぽらんで女癖が悪いけど、根は良いやつで勇気が落ち込んでいると励ましてくれるし、みきさんはいつも元気で家を赤るくしてくれるし、おばあちゃんは勇気のことも本当の孫のように可愛がってくれる。
清一さんはしっかり者のリーダーで、巌さんも三郎さんも、山師として何十年も人生を積んでいるだけあって頼りになる。山太は素直でかわいいし。
直樹さんはツンとしてて全く勇気に興味が無いけれど、それでもめげない勇気に少しずつ心を開いてくれている。
のんびりしているけど時に豪快で、振り回されることも多いけど、それが楽しかったりするのだ。
彼らがなあなあの精神で壁を作らず勇気を受け入れてくれたから、勇気も神去村のことが大好きになったのだ。
平野勇気、神去村で生きる
はじめこそ勇気は肉体的にも精神的もしんどい労働の中で何度も実家へ逃げようとするが、次第に神去山の神々しさや四季の移ろい、おだやかで明るい人々、そして何より自分が手を掛けて育てた木々の成長に心を動かされていく。
春には見たことも無いほど大輪の花を咲かす桜の大木。
夏は燃えるような暑さの中、驚くほど生き生きと輝きだす青葉。
秋には村をあげての不思議な祭りがある。
そしてすべてが静まり返る冬は、気になるあの人と少しだけ近づくことができた。
山奥の星も沈みそうな大自然のなか、勇気は一年を通して神去村で生きていくことに正面から向かい合っていく。
神去村の、中村林業の人々はみんな山を愛しているし、山師を天職だと思っている。
そんな人たちのようになりたいと、勇気は思い始めているのだ。
何もない村だけど、何でもあったあの頃より、生きているという感じがする。
時に命の危機を感じたり、理解不能なこともあるけど、生きていくとはどういうことか、勇気は体当たりで感じ取っていく。
まだ勇気の生活は始まったばかり。
これから村を去る時が来るかもしれないし、このまま生涯山師としてここで生きていくのかもしれない。誰にも分からないのだから、考えるより産むがやすしだ。
人生はなあなあである。
感想
私なんか田舎生まれ・田舎育ちの農家の娘なので、家の周りの用水路に蛍が居たりとか、家なんかカギも掛けずに放置したり、あるよねー!がたくさんあって面白かったのもあるんですけど、物語の中のメインテーマである『林業』については全く知りませんでした。
木を切って植えて、刈って、それをたった数人で回しているというんだから、すごい。
同級生や身の回りのひとで林業やっている人なんていなかったな。
それが現実で、たぶんこれからも劇的に変わることはないんでしょう。
そんな中でも山師という立派な仕事があり、それに命や誇りをかけて取り組んでいる人がいる。
職業本としてもとても読み応えのある本だと思います。
しをんさんの描く、神去村の自然の描写もとても好き。
夏の生命力や、冬の無常さ。ひぐらしの雨や、凍えるような川の水。
あまりにも雄大すぎて、ちょっと道を逸れてしまえば、すぐに取り込まれてしまう。
自然を目の前にすると人間のなんてちっぽけなことでしょう。
また、神去村には本当に神様が住まうという描写もされていて、八百万の神々が地上を歩いていた時代から脈々と受け継がれる信仰は興味深いです。
ちなみに神去山におわす神様はオオヤマヅミとのこと。
これは古事記にも出ている山の神様で、イワナガヒメとコノハナサクヤビメのお父さんです。
かつて天界から地上へと降臨したニニギノミコトが地上の神を娶るとき、美しいコノハナサクヤビメだけを妻とし、醜いイワナガヒメを追い返したことで永遠の命を失ったという神話があります。
これにより天皇家は人間と同じく有限の時を歩むようになったとか。
この二人のお姫様は作中にも登場するので、なんとなくファンタジーな感じにもなります。神隠しのエピソードがあったり、山おろしとかね。
続編の「夜話」には神去村の成り立ちについても書かれていて、これって実際にモデルとなった村のお話なんでしょうかね?
私が知らないだけで、本当に民話としてあるのかな。
民俗学に興味あればもっと楽しめるかも。
勇気は今どきの若者だけど、まあ真面目だし根性もあって、育ちの良さを感じます。
独身の若い女性がいない村で、唯一同年代の美女・直樹さんに一目ぼれしてからは、本人にフラれても、周囲にからかわれても、彼女への一途な思いを隠そうとはしません。
当たって砕けろを地でいっていて、彼女を好きなあまり傷つけてしまうこともあるけど、とにかく好きっていうことが伝わってきます。
そんな勇気に、長いこと報われない片思いをしていた直樹もまんざらではなさそうだし、二人がくっつくのも時間の問題の気がする。。。
あ~二人がくっつく話も読みたいな!続編とは言わないから短編でも発表してほしい。
肩の力を抜きつつ楽しみたい人におすすめです。
↓映画はまた違った感じに仕上がってますが、面白さには変わりませんので機会があれば見てみてください。伊藤英明がまんまヨキ!
WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~ Blu-ray 豪華大木エディション
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陰謀渦巻く宮廷で王女と影武者の絆は強くなる『王国の子』ーびっけ
今回は中世イングランドをベースとした漫画をご紹介します。
かの有名なエリザベス一世をモデルとした主人公が、王位をめぐる陰謀に巻き込まれつつ、周囲と力を合わせて生き延びていく物語です。
2017年11月現在で8巻まで発売されています。
物語も佳境に入り、おそらく9巻で完結予定です!
連続で歴史ものばっか書いているけど、歴史には詳しくないしwiki頼みですよ私は。
この『王国の子』は、舞台こそゼントレンという架空の国を舞台にしているけど、登場人物はそのまま史実通りの名前と設定になっています。
ゼントレンはイングランド、スーデルはスペイン、ネルトはアイルランド、ウステンはフランスでしょうか。
以下ネタバレしてます。
あらすじ(1~8巻)
王族とその影武者
ゼントレンの第二王女・エリザベスは11歳。
彼女は国王・ヘンリーの娘で王位継承権を持つ。彼女自身は素朴な女の子だが、王家たるものいつ命を狙われるか分からないので、そのしきたりに従い、影武者を用意しなくてはならない。
影武者の選定に任命されたのは幼いころからエリザベスを知るウィリアム・セシル。
数年の年月を経てようやく彼が探し当てたエリザベスの影武者、それは13歳の少年・ロバートだった。
ロバートは下町の劇小屋で日銭を稼ぐ孤児で、病気の弟を養うため、その美貌を以って舞台では女役を演じていた。
男ながらエリザベスと瓜二つの容姿を持つロバートは、弟を人質に取られ、また影武者としての報酬につられ、半ば強制的に王家の前に連れてこられる。
最初こそ抵抗していた彼も、弟を守るためにエリザベスの影武者になることを受け入れ、エリザベスも彼の粗野だが裏表のない性格を信頼していくようになる。
ロバートのほかに、王家の影武者はふたり。
国王ヘンリーの影武者・マシューと、エリザベスの弟・エドワード王太子の影武者・ジョン。
王家の影武者となった者には、生活には純分すぎるほどの報酬が与えられ、任期後も働かなくても生きていけられる保障が与えられる。
しかし真実は、王家の影武者となった時点で、ロバートはエリザベスが亡くなれば、口封じのために王家のもうひとつの影・ウォルシンガム家に消される運命にあるということを、ロバートもエリザベスも知らなかった。
王位継承をめぐる陰謀
庶子扱いされるエリザベスは権力争いとは無縁の生活をしていたが、父王ヘンリーの死を皮切りに、次々と陰謀に巻き込まれるようになる。
-
弟・エドワード王の暗殺
エリザベスの父・ヘンリー国王が崩御すると、まだ9歳の王太子・エドワードが国王として即位する。
若すぎる王の誕生に、彼の叔父であるシーモア卿が権力を強めていく一方で、シーモア卿の弟・トマスは王太后の愛人となってエドワード王を操ろうと画策する。
そして、エドワードの影武者であるジョンも、彼の想い人であるジェインを女王とするため、密かにエドワードに毒を盛っていた。
彼らの陰謀により、エリザベスはトマスと姦通していたとしてあらぬ疑いを掛けられて王宮を追われ、シーモア卿の手で大逆罪の罪を着せられたトマスは死刑に処される。
いっそう強くなるシーモア卿の影響下で宮廷は混乱し、エドワード王は毒により次第に体を蝕まれていく。
そんな国王の耳元で、ジョンは「厳格な旧教徒のメアリも、庶子であるエリザベスも次期国王には相応しくない。もう一人の王位継承者・ジェインがいる。」とささやく。
かくしてエドワードの死の間際、次期国王として指名されたジェインは、宮廷の奥から表舞台へ引っ張り出され、ジョンは主君の死に伴いウォルシンガム家に殺害される。
-
ジェイン女王の即位と逃亡
ジェインは訳も分からないまま女王に即位され、実権は彼女の後見であるダドリー家が持つようになるが、今まで名前も上がらなかった遠縁の娘が支配者になることに、横行貴族だけでなく庶民も反発し、自身の継承権を強固に主張するメアリの存在もあり、ジェインたちは次第に追い詰められていく。
そんなジェインを可哀想に思ったエリザベスたちは密かに彼女を庇護し、反逆者として処刑が決まった彼女を逃がすために行動するが、ジェインは幼馴染のジョンが王家に暗殺されて事実を知って、全てを拒否して王家に復讐することを誓う。
-
メアリ女王の即位とジェインの復讐
ジェインの逃亡により、ゼントレンの王位はメアリ女王のものとなる。
メアリは父王ヘンリーの最初の妻の娘で、母親を苦しめた女の娘であるエリザベスを憎んでいたが、成長するにつれて美しく聡明になっていく妹の姿と年老いて美人でもない自分を比べて、一層敵対心を燃やしていく。
メアリは自分の立場を固めるために、母親の生国であり旧教を信仰するスーデルの王子との結婚を進めるが、他国の血をゼントレンに入れ支配されることを危惧する諸侯や民衆の反感を買ってしまう。
メアリ女王への反感と比例して妹姫のエリザベスへの支持が強くなり、それを快く思わないメアリ派の策略により、エリザベスは反逆の共謀者として死刑を命じられてしまう。
しかし、そんな彼女の窮地を救ったのは、逃亡していたジェインだった。エリザベスへの恩を感じ、彼女ならゼントレンを導けると期待したジェインは、全ての陰謀はジェイン元女王が画策したものだと証言し、塔から飛び降りてその儚い命を散らす。
彼女の犠牲を以って辛くも命を救われたエリザベスだが、その後もメアリ女王は不穏な動きを見せ・・・。
エリザベスとロバートのきずな
多くの陰謀を潜り抜けていく中で、エリザベスとロバートは互いにその存在を大切に思うようになる。
本来、影武者は主が緊急時の時にだけ身代わりになるもので、主が望むときに入れ替わるのだが、ロバートは積極的に彼女を守ろうと数々の修羅場に身を投じていく。
トマスの処刑に同席せよと命じられた時、絞首刑に処されようというとき・・・。
もとは弟のために影武者の役を引き受けたロバートだが、弟の死後はエリザベスという庇護対象を心の拠り所として生きていくようになる。
ロバートと生活を共にするようになって、彼の飾らない人柄や臆せず自分を叱咤するロバートの存在を掛け替えのない友達のように感じているエリザベスは、そんな彼の捨て身に激しい怒りを抱く。
エリザベスとロバートは、ロバートの死の危機に際しようやく互いに本音を吐露する。
お互い対等に、どちらかがどちらかの為に生きるのではなく、一緒に運命を共にしようと誓いあう。
感想
現在、メアリが病気により崩御し、とうとう王座がエリザベスのもとに転がってきたところで続いています。
王位からは一番遠いところにいた彼女が、宮廷に潜む陰謀により女王として即位し、ゼントレンを導いていく存在になるのか。
そして彼女と魂を分けた存在であるロバートとの関係はどうなるのか。
あと1巻で最終巻とのことですが、どうなってしまうんでしょう~?
史実と照らし合わせると、エリザベス1世はその後イングランドを長きにわたって栄光時代に導いていく名君となるわけで、ロバートのモデルである、女王の幼馴染・ロバート・ダドリーは彼女の愛人兼臣下として表舞台に出てくるようですね。
ウィリアム・セシルもその晩年まで腹心の部下として活躍しているようだし、王家の影の臣下であるフランシス・ウォルシンガムも、彼女の優秀な手足として活動していくようです。
愛人はたくさんいたけどついぞ結婚しなかったヴァージン・クイーン。
その心にはいつも半身であるロバートがいたんでしょうか。
王家の影武者は主が死ねば殺される・・・その事実をまだエリザベスとロバートは知りません。
もし真実を知ったら、エリザベスはどうするのでしょうか。
ロバートを大切に思っているがゆえに、彼を縛り付けてはいけないと苦しんでいるのに。
ロバートはロバートで、エリザベスを信頼している大切に思っているけど、彼女が死んだからと言って後追いするようなタイプではないから、やっぱり殺されるのは嫌だろうな・・・。
絶対に死なないし、殺されない。
そのために二人で協力して宮廷を生き延びていくのかな。
絵も綺麗だし話もまとまっていてとても読みやすいです!
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紅はいらぬ、剣を持て。『剣と紅』ー高殿円
戦国つながりで、もうひと作品。
大河ドラマ『おんな城主 直虎』で有名になった井伊直虎を主人公とした小説です。
ていうか「剣と紅」で検索したら、三島由紀夫の暴露小説が出てきたんですけど。
「剣と寒紅」っていうやつ。三島由紀夫と同性愛関係にあった著者の作品らしいです。
さて。
井伊直虎を主人公とした物語で、彼女が生まれてから亡くなるまでの生涯が描かれています。
ただ、この物語は普通の歴史ものではなく、主人公・直虎を先見の明を持つ特殊な人物としており、彼女は幼いころから「小法師」としてものごとの吉兆を予知することのできる巫女として領民から受け入れられています。
女ながら領主として君臨できたことを、「神懸かり的な存在」として説得力を持たせているんですね。
大河ドラマでも「竜宮小僧」なる座敷童のような存在が示唆されていましたが、同じようなものでしょうか?(大河は見てません。。。)
井伊直虎について記載された文献はとても少ないそうです。
そのため、直虎の名前(大河だとおとわですが、こちらでは香(かぐ)という名です)や、小野政次の関係も創作要素を多分に含んでいます。
それでも話の流れや展開に無理がなく納得できます。
また、当時の勢力図についてもきちんと説明されているので助かります。
井伊谷(直虎たちの領地)は直虎の祖父の代で戦に敗れ、今川氏の配下に下っていますが、昔ながらの氏族で固まり親類内で婚姻を続けていた閉鎖的な井伊家は従順な家臣ではなく、直虎の存命中にも度々家を取り潰しされそうになるという憂き目に合います。
決して大きくもなく力も強くない井伊家がいかに戦国時代を生き抜いていくか、というのが良く分かります。当時、家を潰されるということはとても大きな意味をもっていたんですね。。。
<あらすじ>※ネタバレあり
香(かぐ)は幼いときから何か悪いことが起こるとその先触れを感じることができた。
大雨により川が決壊するというときにはその兆示を先見し、多くの領民の命を救ったことから幸福をもたらすという「小法師」として神のように崇められていた。
しかし、彼女自身は兆示を見ることが出来ても自分の力では何もできないため、自分の力を忌み嫌っていた。
香は、和歌よりも漢詩、綺麗な着物を着て楽器を奏でるより野山を駆け回る方が何倍も好きな、男勝りな少女に育つ。
香には、幼馴染で許嫁である従兄弟・直親がいた。
素直で明るい直親は、頭でっかちで子供らしからぬ賢さを持つ香にとっては、唯一仲良くできる少年だったのだ。
しかしながら、そんな二人を悲劇が襲う。
謀反の兆しありとして、直親の父親が今川に殺されたのだ。
さらには直親をも殺せとのお達しがあり、井伊谷は直親を逃がそうとにわかに慌ただしくなる。父親との別れもきちんと済ませぬまま、もう生きて戻れない覚悟をもって井伊谷を後にする直親。
この事件には、井伊家家臣である小野家が今川に密告したとの裏があり、香も飄々として食えない小野家の長男・政次を警戒する。
悲しみにくれる井伊家の葬儀の際、嫌がる香につきまとう政次は、土産だといって香に口紅を渡す。
香はその口紅を拒否し、もののふに必要なのは剣だと説く。
そして、政次の死に化粧をするのは自分だ、と言う香。
直親の父が死に、井伊家の時期当主として期待されていた直親も失った今、井伊谷での小野家の勢力は一層強くなっていく。
小野家は政次を井伊家直系の姫である香の婿に据えて、井伊家を乗っ取ろうとしていた。
周囲の勢力に押され、また政次も本気で香を娶る気でいる中で、香はどうしても政次の妻になる気が起きなかった。
感情が読めず食えない男だが、香は政次を人間としてはむしろ好きな部類だと捉えていたが、彼女の人に見えぬ力が、どうしても政次は駄目だと告げているのだ。
とうとう香は政次の目の前で髪を下ろし、尼になることで政次の妻になることを避けた。
尼になってから、彼女は自分の人ならざる力をコントロールしようと励むが、悪い予感を察しても対抗することはできない。
香の父で井伊家当主である直盛が戦地に赴くときも、井伊谷に戻った直親がその陰謀を見破られ今川に向かうときも、彼らが死ぬと分かっていて何もできなかった。
彼女はただの女子に過ぎず、何の力も持たなかった。
現実に打ちひしがれる香に政次が言う。「男におなり下さいませ、香さま。」
井伊家の血筋が絶え、滅んでしまう前に。
香は還俗し、名を直虎と改め、女領主として井伊家を支える決意をする。
まだ幼い直親の子・直政が井伊家の跡継ぎとして成長するまで、井伊谷を守ると。
物語の語り手は、成長した直政です。
養母がいかにして女ながら主となり故郷を守ってきたのか、主君である徳川家康に語っているのです。
養母・直虎は生涯でただ一度だけ、紅を差した、その理由を。
直虎の生涯をドラマティックかつ歴史に忠実に描いているのですが、特に重要な要素として、香と政次の関係があります。
香は井伊谷のものを数多く葬ってきたこの切れ者の部下のことを、嫌いではありません。彼が小野家のために行動していることも、その譲れないものも理解できるし、一度は本気で夫婦になるとも考えていた相手なのです。
政次も政次で、香のことは巫女として敬意を表し、それ以上にその人柄に惹かれていました。いつもは人を食ったような態度で何手も先を読んでいるのに、香の前だとその皮がはがされてしまうのです。
表向きは敵対していても、互いを認めている。
香は死に際を飾ってやると約束しているし、政次は彼女だけを畏れている。
作者はこの二人のなんとも形容しがたい関係に非常に魅力を感じていたことが伝わってきます。
政次の計らいで直虎が地位をはく奪されるシーン。
政次は香を現人神として畏れていたけど、本当は人間であって欲しかったんだなと思いました。
自分と同じ、ちっぽけなんの力も持たない、ただの人間に。
それほどに香を愛していたんだなって。
香も、誰からも神懸かりとして扱われて距離を置かれ、その責務に押し潰されそうな自分を、ただ一人人間として見てくれる政次のことは憎からず思っていたんだと思います。
二人の間に言葉はないけれど、政次の死後彼の死を弔う香のシーンは、ふたりがやっと互いの立場に縛られず向き合うことができて、自由になれたんだなって。
史実では直虎の代で井伊家はお家取り潰しになり、直政が成長して徳川家に仕えてからようやく復興出来るんですけど、もはや井伊谷に本拠は無いんですよね。
直政が彦根城主になるから、井伊谷の家臣たちはみんな彦根に行ってしまうんです。
だから、あの地に残された井伊家は直虎が最後なのかな?
女ながら男として生き、家を守るために戦った直虎。
彼女の秘められた歴史がこの物語なら、夢が広がります。
大河との違いも感じつつ、是非読んでみてください。
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上杉謙信が女武将だったら――?『雪花の虎』ー東村アキコ
上杉謙信女性説っていうのは、割と有名らしいですよ、奥さん。
雪花の虎 1 (ビッグコミックス) (ビッグコミックススペシャル)
- 作者: 東村アキコ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/09/11
- メディア: コミック
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2017年11月現在で5巻まで発売されています!
ちょうど川中島が見えてきたところです!
東村アキコ先生はデビュー作?の『きせかえユカちゃん』のときからファンで、あのテンションとギャグセンスに子供ながら尊敬してまして、、、、
でも正直、歴史ものっていうイメージないよね。
しかも戦国の漢!戦!みたいな漫画、どうなるんだろー?って感じで様子見してたんだけど、1巻試し読みしてみたら!
めっちゃおもしろい上杉謙信絵巻になってたよーーーー!
いつものアキコ節は抑えられてはいるけど健在で、私みたいに日本史疎いやつでも読みやすい工夫もされてました。
むしろ血なまぐさく重くなりがちな話が、ギャグで中和されてさらっと読んでいける!
主人公も「もしも上杉謙信が女性だったら」説のためもちろん女の子なので、恋愛描写もあって女性読者は嬉しいと思う。
なんでもかんでも恋愛要素を欲しがる私みたいな夢女子にはちょうどよいです。
<あらすじ>※ネタバレ注意
長尾景虎(のちの上杉謙信)は越後の国(今の新潟あたり)の姫として生まれましたが、その誕生には曰くがありました。
景虎の母の夢枕に毘沙門天が立ち、その生まれ変わりとして生を受けたというのです。
生まれてくるのは男の子だとばかり思っていた父・為景(ためかげ)は非常にがっかりしますが、それでも予言を信じて姫に「虎千代(景虎の幼名)」という男の子の名をつけ、男の子として育てたのです。
というのも、虎千代姫には後継ぎたる兄・晴景(はるかげ)がいるのですが、彼は体が弱く戦嫌いの気性のため、後継ぎには頼りないと思われていたからです。
毘沙門天の生まれ変わりたる虎千代姫、女子ながらその辺の男には負けないくらいの腕白で、「姫が男であれば・・・」という声は年々大きくなるばかり。
虎千代姫は姫で、自分は女ではない!男として戦に出るのだ!と息巻いているのです。
そんな中、父・為景が病に倒れ亡くなり、兄の晴景が後を継ぎます。
虎千代姫は弟として兄を支える決意を固めますが、体は日々女へと近づいていきます。
男になりたい虎千代と、男ながら主君たる威厳のない兄・晴景。
晴景は自分が越後を治めきれないことを自覚していて、このまま女として腐らせてしまう前にと、虎千代を男として元服させ、弟・景虎して越後の主要城である栃尾城主に任命します。
↑一発でお城の姫君を悩殺する景虎。ヅカばりの男前さで一気に人気者に。
15歳にして一国の城主となった景虎。
女の城主が立ったなどと周りに知られれば、ただでさえ晴景の影響で越後諸国の勢力バランスが崩れつつあるのに、栃尾城はすぐ攻め落とされてしまう。
周りはそう危惧するのですが、景虎は女であることを隠そうとしません。
女ながらその気迫と度胸は並みの男以上であると自覚している景虎は、その頭の良さとカリスマ性で見事敵を撃退します。
しかしそのカリスマ性は、兄・晴景の甲斐性なさをいよいよ引き立ててしまい、周囲からは景虎を越後の国主にという声が高まります。
↑兄・晴景。やさしくて弟思いなんですが、国主の器ではないと自覚。
兄を慕う景虎はその地位を脅かすようなことはしたくないし、兄の晴景も景虎から女としての人生を奪ってしまったことに後ろめたさを感じています。
お互い血を血で洗うような真似はしたくないーーーそう思った兄弟は、景虎が晴景の養子となり正統な後継者として、兄から国主の座を譲り受けた景虎。
こうして彼女は、女ながら22歳という若さで越後統一を果たしたのでした。
一方、彼女と生涯をかけて争うことになる武田信玄も、着実にその勢力を伸ばしており・・・。
↑女子とは言えぬ気迫。裏切り者には容赦しねえ!
随所に、作者が感じた「謙信って女にちがいねえ!」という主張がたくさんされています。
女だったらこう考えるだろう、女であれば納得がいく・・・。
確かにそういわれてみると、むしろ女じゃない方が不自然とさえ感じてくるんですよね。
謙信の肖像画とか、信長に懸想されていたとか、謙信女性説を裏付ける逸話はたくさんあるそうですよ。
歴史ってほんと、資料が無い分想像の余地があって面白いですね。
で、この「雪花の虎」で面白いな、と思ったのが、
景虎が女であるっていることを非常にオープンにしているところなんです。
こういう男装の麗人系の物語って、女が男と偽って、隠すっていうのがセオリーだと思うんですけど、景虎ちゃんも父上母上も、みんな隠さないんですよ。
いや、部下たちはなめられるからとか士気が下がるからとかって男だと隠そうとするんですけど、景虎は積極的に女であることを主張して、むしろ女を武器にして戦っていくんですよね。
色仕掛けって意味じゃないんだけど、「まさか女が」と思わせておいて叩く、みたいな。
自分が女に生まれたことを悩んだり恨んだりしても、割と早い段階で自分の性を受け入れている。自分は女だけど、それ以上に「長尾景虎」であるということを意識しています。
女であることの強みも、弱みも、全部超越したような。
そこが今までの女性説をベースにした話とは違うところかな。
これから彼女はどうなっていくんでしょうね~。
武田信玄と温泉でニアミス(しかも女姿)してしまうドッキリ展開あり。
師とも兄とも信頼する修行僧との禁断の関係もあり。
女でもよし、男でもよし。一粒で二度おいしい。
がっちり乙女が喜ぶ萌え要素も詰まっています。
史実を踏まえつつ、女武将がどのように戦っていくのか。
wiki見たらあっちやこっちや戦いに明け暮れてて大丈夫かなとも思うけど・・・
もし戦場で信玄さんと再会したらどうなってまうんや。あいつ絶対惚れとるで。
気になった方はぜひ読んでみてください。
↑今後30年に渡って景虎を支えることとなる宗謙。彼の前だけで景虎は甘えることができるのです。
↑武田信玄はキツネのような優男として描かれています。底知れぬ野心を感じる。
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この純愛がやばい!『青野君に触りたいから死にたい』ー椎名うみ
Pixivコミックから試し読みしてまんまとハマってしまいました。
しかも夜中に読んじゃったもんだからさ・・・布団から足が出せませんでした。
2017年11月時点で2巻まで出ています。
続きが気になる~!!
<あらすじ>※ネタバレあり
主人公の仮屋優里(かりやゆうり)は根暗な女子高生で、いつもひとりぼっちだけど特にそのことに対して劣等感とか孤独感は感じていない、普通の女の子。
クラスメイトに名前を覚えられていなくても、教室でひとりでお弁当を食べていても気にしていません。
そんな彼女が、はじめて恋をします。
相手は違うクラスの一度も話したことのない同級生・青野龍平(あおのりゅうへい)。
ふとしたことから彼に一目ぼれし、彼に近付きたくて思い切って告白します。
↑ぼっちを拗らせすぎて自意識過剰になってしまう優里。かわいい。
ほぼ初対面にちかい優里の告白を青野君は受け入れ、そこからは高校生らしい仲睦まじい交際がスタート。
青野君と出会う前の自分を思い出せない・・・優里ははじめてできた彼氏にぞっこんになりますが、そんな二人を悲劇が襲います。
付き合ってから2週間で、青野君は死んでしまいました。
青野君のいない世界で生きてなんていけない。
そう思い詰めた優里は自殺を図ります。
しかし、そんな優里のもとに現れたのは、幽霊となった青野君でした。
優里にだけ見える青野君はいつもの青野君でした。
触れることもできないし、ほかの人に紹介もできないけれど、それでも優里は恋人が戻ってきたことを喜びます。
そんな二人の日常ですが、あるきっかけから度々青野君の様子が可笑しくなります。
いつもの優しい彼ではなく、優里を支配したがる「もう一人の青野君」が出てくるようになり、彼と接触した後の優里は体調に支障をきたすように。
青野君は青野君で、「もうひとり」が出ている間は他人に憑依していて、なにがどうなっているのか分からない。
彼が出てくる時間は次第に長くなり、その間の記憶はいつもの青野君にはありません。
↑青野君ともっと一緒にいたい優里は、彼に「私に憑依できるのか」と尋ねますが・・・。
とうとう「もう一人の青野君」により怪我人も出てきてしまいます。
優里はオカルトオタクのクラスメイト・堀江美桜(ほりえみお)と、青野の親友・藤本と共に、青野君を救うために行動します。
優里は悪霊と化す青野君を恐れながらも、それでもずっと一緒にいたい。
青野君のためにも彼を成仏させなきゃいけないとは理解していても、それなら一緒に死にたいと思っています。
青野君のためならなんだってする女の子なのです。
1巻では二人の恋愛模様や、幽霊と人間であることの切なさが描かれていますが、徐々に青野君の恐ろしい一面が広がっていきます。
もう一人の青野君は何者なのか?
二人はどうなっていくのか?
という点を主軸に優里の青野君への愛情や献身、幽霊と人間の恋愛を描いています。
優里ちゃんの一途で素直なところが非常に可愛いんですけど、一方でホラー描写もバンバンあるので苦手な人は注意かも。
優里に化けて美桜の家に入りたがるもう一人の青野君。
青野君が優里に憑依しているときの心象風景。
バツのついた電柱やごみの散乱した部屋。
青野君の部屋?にいた謎の人物。
めちゃくちゃ怖い。
伝統的なオカルト要素も出てきます。
「幽霊は招き入れられなければ入ることが出来ない。」とか。
『ぼくのエリ(原題:Let the right one in)』という映画があるんですけど、これは吸血鬼が出てくる物語で、この映画で初めて知ったんですが、吸血鬼も「入ってよい」という許しがなければ建物や部屋に入ることが出来ないんですね。
原題のLet the right one inは「正しきものを入れよ」という意味。
招いても良いものだけを招きなさいということでしょうか。
この映画は『モールス』という題名でハリウッドリメイクもされていますので、よかったらどうぞ。
優里は青野君に「入れて」と言われれば拒むことが出来ません。
彼のことが大好きだから。
それがいっそう青野君を暴走させて自分や周りを傷つけることになってしまう。
二人が人間の世界で一緒になれないのなら、やっぱり優里が死ぬしかないのかな・・・とも思うんですが、優里が死んでも青野君とは一緒にいられない、ともう一人の青野君が否定しています。
もう一人の青野君は、感情が見えず恐ろしい存在ですが、優里にだけは優しい。
彼女を傷つけた同級生を怪我させたり、彼女の質問には対価をねだらずちゃんと答えたり。
青野君が優里に憑依している間、優里と話しているのはもう一人の青野君です。
もう一人の青野君は死者の世界?で優里にご飯を無理やり食べさせようとしていますが、これってヨモツヘグイなのかな。
あの世のものを食べると現世に帰られなくなるっているやつ。
もしかしたら青野君は青野君で、二人がずっと一緒にいられるために彼女を死者の世界に縛ろうとしたのかな・・・?
どちらにせよ、謎が多くて二人がこれからどうなっていくのか予想が付きません!
3巻はいつ出るのかな~
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たしかに優里はメンヘラだよ・・・!
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それは、24時間歩き続ける青春『夜のピクニック』ー恩田陸
私も高校時代、歩行祭があったんですよ。
2年に1度、全校生徒で1日歩くっていう学校行事が。
朝9時くらいにグラウンドをスタートして、午後3時くらいに戻ってくるという。
コースは2パターンあって、距離は長いけど平坦な道を進むか、短いけど登山かっていうくらい険しい道を進むか、毎回違ってました。
山道はほんとに傾斜が鬼のようにきつくて、獣道ってくらい整備されてなかったんで、私は断然平坦コースが良かったです。
うちは半日だったけど、物語りの中じゃ仮眠挟んで24時間だもんね。
私なら救護バス乗ってるわ。
丁度歩行祭の前にこの『夜のピクニック』を読んで、それ以来何度も読み返してしまうくらい好きな本。
大人でも、子供でもない高校三年生の二人が、歩行祭という非日常を通して、自分や相手の気持ちに向き合うお話です。
<あらすじ※ネタバレあり>
甲田貴子の高校には、修学旅行が無い代わりに、「歩行祭」という変わった行事がある。
それは毎年、全校生徒で約80キロの距離を24時間かけて歩き通すという、考えただけでも気が滅入りそうな行事なのだ。
貴子は高校三年生。これが三度目で、最後の歩行祭となる日に、貴子は一つ、自分との賭けをした。
それは、自分の異母兄弟であり、一度も話したことのないクラスメイトの西脇融と話をすること。
貴子は母親と西脇融の父が不倫して出来た子供で、あろうことか正妻の息子である融と同じ学校・同じクラスになっていたのだ。
そうした複雑な事情があって、融は自分の家庭を壊した貴子を嫌っているし、貴子は貴子で負い目を感じていて、二人はお互いを意識しているものの会話したこともなかった。もちろん、周囲のクラスメイトは知る由もない。
それでも、父親が亡くなった今では、たった一人の血の繋がった兄弟。
貴子は卒業して進路が別々になってしまう前に、この一大イベントを通して、融に「父親の墓参りに行こう」と言いたかったのだ。
ただ、みんなと歩く。
たったそれだけの行事だけど、友人のいつもと違う一面を知ったり、もくもくと歩く中で考えを整理したり、いつもと違う風景を見たりすることで、貴子たちは自分の気持ちに向かい合っていく。
海の向こうへ渡った杏奈の秘密とおまじない。
いつも完璧な美和子の告白。
落ち着いててしっかりしている千秋の、溺れたいほど好きな人。
クールに見えて情に厚い戸田の密かな後悔。
そして、頑固で不器用な融の、割り切れない感情。
貴子はずっと、融のことが知りたかった。
自分と同い年の、自分と半分血の繋がった兄弟。
二人はどことなく似ていて(顔じゃなく)、貴子はなんとなく融の本質や思考を想像できるけど、でも本当は言葉で理解したいと思っている。
それが自分に向けられる憎しみや怒りであろうと、正面から受け止めたいと思っている。
戸田はそれを、「引き算のやさしさ」と言った。
憎まれてもいい、許してくれなくてもいい。
それが彼女の強さで、だからこそ融も貴子を憎み切れず、それどころか羨望を向けている。
融はそんな自分が許せなくて、家庭を壊した甲田親子を「憎まなければ」と思っている。
それが一人残された母親の為だし、それ以上に今までの自分を否定することになるからだ。
不倫した家の子供が、自分と同じような、それどころかもっと幸せそうな家庭にいていいはずがない。罰を受けるの貴子で、自分は被害者だ、と。
融は貴子を徹底的に拒絶する。目も合わさないし、口もきかない。
でも本当は、貴子と同じくらい兄弟のことを意識している。
しなやかで凪いだ海のような彼女のことを、好ましく思っている。
貴子は賭けに勝ち、深夜の勢いで融に「誕生日おめでとう」と言うことができた。
融もそんな貴子に拒否反応を示すこともなく、ただ「ありがとう」と応える。
それが本来のあるべき姿とでもいうように。
二人は親友たちの協力もあり、はじめてお互いを見つめることができた。
親の不倫という、生まれながらの問題に縛られるあまりに、今まで見えなかったものを見ることができた。
二人はただの個人として、そしてたった二人の兄弟として、お互いを好ましいと受け入れることができたのだ。
物語はハッピーエンド。
続きは二人が紡いでいく。
この作品、映画にもなっているんですけど、こちらも非常に良い作品です。おすすめ。
多部ちゃんがかわいいのよ!
まさに貴子、ってかんじの、老成してるけどやっぱり高校生って感じが。
融役の石田卓也の武骨な感じもまんま融だし。
彼は「蝉しぐれ」にも出てるんですけど、武士の子っていうか今どき珍しい硬派な役柄がとても似合いますね。
あと、時をかける少女の千昭役の声優もしてますよ!未来で待ってる!
私も歩行祭したことあるから分かるんですけど、
疲れてると本音っていうか本性出るよね。旅行とかでもそう。
ほんま思いついた下らんこととか口をついて出てくるし、誰も突っ込まないから言いたい放題。で、最終的に無言。
しりとりが意外と間を持たすとか。
でも、歩いてる時が一番考えがまとまる。
散歩してるときとか、特に景色とか見てないのにつらつらといろんなことが浮かんでくるんだよね。
歩きながら話すことで、作中でも沢山のいままで知らなかった、多分歩行祭が無ければ一生知ることのなかった事実が出てきます。
貴子と融の関係しかり。杏奈の好きな人しかり。戸田くんの元カノしかり。
みんな、言いたくても言えなかったんだよね。
特に融の、憎みたくても憎み切れない感情が、貴子とふと言葉を交わすだけで解かれていく流れが、とてもよかった。
一人で頑張ったような気になって肩ひじ張って生きてきた融が、やっと自分や取り巻く環境を許せたような。
貴子は最初から許していた、っていうか、立場的に許してもらう側だと思っているから、あとは融だけだったんだよね。
ああ、良かった。
願わくば、これは歩行祭だけの夢になってしまわぬよう。
おわり。
手にした力は、破壊か、救いか?『薄紅天女(うすべにてんにょ)』ー荻原規子
はい、三部作最終巻。
勾玉三部作では一番好きです。
最初読んだときは何かな~?って思ってたんだけど、読み重ねるごとに登場人物を好きになっていく。
白鳥異伝よりさらにあと、平安時代の京都と関東地方が舞台になります。
更級日記の「竹芝物語」と蝦夷の阿弖流為(アテルイ)の伝説を下敷きに、勾玉をめぐる輝と闇の物語に終止符が打たれます。
更級日記って読んだこと無いんですけ、菅原孝標の娘が父親の赴任に伴って京都に戻ってきたとこらから、彼女の少女時代やその後の結婚、夫の病死などを日記としてまとめたもの、らしい。
竹芝の伝説っていうのは、その日記の中の一節で、都のお姫様を連れて駆け落ちした衛士が故郷の武蔵の国に帰るっていうストーリー。
阿弖流為については、東北地方の豪族で、まだ朝廷の支配が届いていなかった時代に朝廷の侵略を撃退した人。最後は朝廷に敗れて処刑されちゃうんだけど。
それではあらすじをば。いつものごとく長いしネタバレしている。
主人公は武蔵の国(現在の関東地方)に生まれ育った阿高(あたか)という少年と、その同い年の甥である藤太(とうた)。
二人は朝廷の血を引くという竹芝の一族の長の血筋で、双子のように仲が良く、若者の間でも目立った存在。
阿高は長の長男の息子という立ち位置だが、父親は蝦夷侵略の折に亡くなっており、母親も知らない。実は母親は蝦夷の巫女姫で、強大な力を持つ勾玉の主だった。
阿高は、蝦夷から自分を探しに来たという男たちに会い、自分の出生の秘密を知るとともに、恋人ができ今まで同じように二人一緒ではいられなくなった藤太を見て孤独感と覚え、蝦夷の地へ向かう。
阿高は母と父が出会った地でに連れてこられるが、蝦夷たちも朝廷に服従する派閥と徹底抗戦を進める派閥が敵対しており、敵対勢力に連れ去られ軟禁される。
言葉も通じない環境の中で阿高は、自分が巫女姫である母親と同じ役割を求められるが、阿高自身は男であり、それゆえ勾玉は制御できない災いに変化してしまう。
敵対勢力に殺されそうになるが、阿高を追って竹芝から出てきた藤太と、蝦夷討伐の将・坂上田村麻呂に救われ、窮地を脱し、京へ向かうこととなる。
一方、京の都ではもう一人の主人公・苑上皇女(そのえのひめみこ)が、怨霊が猛威を振るう宮廷で父帝や体の弱い兄皇子を救うため、男装して朝廷の役人・藤原仲成と共に怨霊退治に向かう。
怨霊に襲われていたなかで阿高たちと出会い、身分を隠して行動を共にするようになる。
苑上は度々怨霊に狙われるが、それは苑上が帝の血を引いているから。
怨霊は宮廷にはびこるものだと見抜いた苑上は、勾玉の主であり「皇を亡ぼす力」を持つ阿高を伴って宮廷に向かう。
ーーーという感じのお話になっております。
これは阿高が苑上に会うまでが結構長くて、阿高が蝦夷に連れ去られるとことか、結構つらいシーンもあるんですけど、ボーイミーツガールした後はサクサク展開していく。
敵は何なのか?っていうのが見えにくいのがこのシリーズの特徴だと思うんだけど、今回については肉親同士で殺し合う宮廷の闇、でしたね。
帝位をめぐって血を血で洗う争い。それを災いを以って倒す、っていうのが新しい。
苑上は今までのヒロインと違って輝側の人間だから、お嬢様っぽくて天然なんだけど、やはり行動力はある。男装して怨霊討伐にでちゃうくらいだからね。
阿高も今までのヒーローが頼りない感じだったのに対し、一見クールだけど繊細ってかんじですね。仲間には優しいけど敵には容赦しねえ、みたいな。
この組み合わせ、とてもかわいい。
糖度はあんまりないんだけど、あの阿高が!終盤まで全然そんな素振りみせなかったのに、最後に苑上を連れていっちゃうんだよー!
まあ苑上も自分から連れてって!って言えるタイプじゃないしね。
これが竹芝伝説につながるんですね。
あと藤原仲成と薬子が同一人物っていうのも面白かったですね。
薬子さん、史実では帝に取り入って宮廷を混乱させたっていうことで、処刑されちゃうんですよね。薬子の変。
苑上を囮にしたり、冷徹な手段も取るけど、全部皇子のことが大切だからなんだけどな。
結構史実にも出てくる人たちが多いから、のちの展開も調べてしまうんだけど、あの儚い兄皇子とあどけなかった弟皇子が、最後は敵対して殺し合いになっちゃうんだよ。。。
阿弖流為と田村麻呂も友情のようなものが出来そうだったのに、結局殺されちゃうし。
主人公二人は竹芝で平穏に暮らすのが、一番よかったね。
勾玉シリーズだけど、勾玉はあくまでアイテムで、最後まで出てこなかったり、他人のものになっちゃったりしてるんだよね。
とにかくこれで、勾玉シリーズは全部ですね。
これ以外にもいくつか流れを汲む物語があるんだけど、それはまだ未読なのでまたの機会に。
おわり。
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